news全国の「がん遺伝子パネル検査実施患者」106人にがんゲノム医療に関する調査を実施

検査実施患者の半数以上が難しさを理解しつつも「治療薬・治験の拡大」を要望
実際に検査を受けたからこそのリアルな声から見えてきた課題とは?

当社では、これまでも本テーマに関するさまざまな調査を行っており、本調査は2020年に第1回目を実施。以降毎年調査を行い、今回で4回目となります。がん遺伝子パネル検査※1を受けた患者106人を対象とした今回の調査では、実際に検査を受けたからこそ感じた患者のリアルな声から、がんゲノム医療の課題が示唆されました。

※1:がん遺伝子パネル検査:1回の検査で数十~数百の遺伝子を同時に調べることができる遺伝子検査。高速かつ大量に解析可能な次世代シークエンサーが用いられ、見つかった遺伝子変異に対して効果が期待できる治療の有無を検討する

調査結果のポイント

  • 「がんゲノム医療」「がん遺伝子パネル検査」について、主治医による説明で初めて知ったと回答した割合は76%
  • 検査について説明を受けた後は「心配」「不安」「関心」の感情が多く回答されていたが、検査を受けて結果の説明を聞いた後は、新たに「安らぎ」の感情が多く回答されており、患者の感情に変化が見られた
  • 約半数ががん遺伝子パネル検査に「満足」と回答。「どちらともいえない」「満足していない」理由からは現状のがんゲノム医療における課題が浮き彫りに
  • 半数以上の回答者ががん遺伝子パネル検査実施後の要望として、「検査実施後に使用可能な治療薬」「検査実施後に参加可能な治験」の拡大と回答した

1.「がんゲノム医療」「がん遺伝子パネル検査」について主治医による説明で初めて知った、と回答した割合は76%。検査について説明を受けた後と、検査を受けて結果の説明を聞いた後では感情の変化も

「がんゲノム医療」「がん遺伝子パネル検査」について、主治医による説明で初めて知ったと回答した患者は全体の76%となりました。保険が適用されてから5年がたつものの、未だ認知度が低く、患者自らがん遺伝子パネル検査にたどり着くのは難しいことが分かりました。また、患者ががん遺伝子パネル検査に関する情報を得るには、がん遺伝子パネル検査を行う医師や施設の意向が大きく影響するものと考えられます。

がん遺伝子パネル検査についての説明を受けた後の感情について確認したところ、「どのような検査をするのか」など、これまで受けたことのない検査に対する「不安」や「心配」の声が多く見られました。また、がん遺伝子パネル検査は標準治療※2実施後の患者が適応となるせいか、「自分に合う治療がみつかるのか心配」「検査がうまくいかなかったらという不安」「今後の治療の可能性への期待」などが多くあげられました。

検査の説明を受けた後と比較し、検査を受けて結果の説明を聞いた後の感情では、「安らぎ」が多く回答されていました。その理由として「結果が出たこと」「家族性の腫瘍ではないことがはっきりしたことで安心した」などがあげられています。また、「今後どうなっていくのか」「これからの治療はどうなるのか」などの「不安」や「関心」の感情も多く、結果の説明を受けた後の感情にはばらつきがみられます。検査結果により患者が抱く感情とその理由はさまざまであることがわかりました。

※2 標準治療:特定の疾患や病態に対する医学的な治療の中で一般的に受け入れられている、あるいは推奨されている方法や手順のこと

2.約半数ががん遺伝子パネル検査に「満足」と回答。「どちらともいえない」「満足していない」理由からは現状のがんゲノム医療における課題が浮き彫りに

がん遺伝子パネル検査に対する総合的な満足度を聞いたところ、「非常に満足している」が16%、「満足している」が35%で、全体の約半数が満足していることが明らかになりました。満足度が高い理由として、検査を受ける機会があること自体を貴重だと捉えていることや、治療が見つからなかった場合でも「家族性腫瘍でないことがはっきりしたため満足している」といった回答もみられました。一方、「治験が見つかったが申し込みやその他の情報収集に費やす労力や体力が現状難しかった」「長い時間待ったが、治療が見つからなかった」という理由から満足に至らなかったとの回答もあり、検査依頼から結果報告までの期間(TAT※3)が長いことや、治験までのアクセスが容易ではないなど、がん遺伝子パネル検査の現状の課題が満足度に影響していることがうかがえました。

※3  Turn around time(TAT) 

3.がん遺伝子パネル検査を受けた患者の半数以上が、「使用可能な治療薬」「参加可能な治験」の拡大を希望

がん遺伝子パネル検査を受けた患者の半数以上が「使える薬がもっと増えてほしい」「参加できる治験がもっと増えてほしい」と回答。標準治療実施後の患者は状態が良くないことも多いため、治験への参加をあきらめる患者もいると考えられます。

考察

2019年6月にがん遺伝子パネル検査が保険適用を取得し、がんゲノム医療が本格的にスタートして今年で5年目となりました。しかしながら、検査実施患者数は2022年半ばまでは上昇傾向にあったものの、それ以降横ばいが続いている状況です。今回の調査結果からもがんゲノム医療浸透への課題につながっていると推察される回答も多く見られました。

本調査にて明らかになった患者の思いとして「検査実施後に使用可能な治療薬や、参加可能な治験の拡大」があります。これらの患者の大半が、検査をしても必ずしも治療につながるわけではない点について事前に医師から説明を受け、理解はしているものの、それでも検査後の気持ちや要望として治療の選択肢が広がることを期待している姿がありました。

その思いに応えることの出来る手立ての一つとして、治験への患者アクセスの改善が考えられます。治験の多くは首都圏などの大都市にある施設で行われており、地域間の格差が依然として存在しています。そこで、本調査では「オンライン治験」にも焦点を置き、患者に認知度と参加意向を聴取しました。その結果、認知していた人は一人もおらず、参加意向については「参加したい」が14%、「参加したくない」が25%、「わからない」が60%となりました。オンライン治験は一部の施設で取り組みが始まって間もないため、医療関係者の浸透度が高いとは言えず、その説明を受ける患者も少ない現状がうかがえます。まずは医療関係者へのさらなる浸透を図り、患者に対するオンライン治験の説明機会を増やすこと、そして、医療関係者・患者ともにオンライン治験のメリットや懸念点を正しく理解してもらうことで、治験参加率の向上につながるのではないでしょうか。そしてそのことが、その先の治療薬開発の取り組み拡大につながり、自分に合う治療薬が見つからない患者の数を少しでも減らすことができるのではないでしょうか。

がんの治療期間は長くなるケースも多く、患者はあらゆる面において不安を抱き続けています。最近では、がん遺伝子パネル検査の自由診療と保険診療を組み合わせる混合診療や、初回治療実施前でも検査を受けることを可能にするなど、制度見直しも検討されています。患者の不安が少しでも払しょくされるような「がんゲノム医療」「がん遺伝子パネル検査」実施のための環境整備が行われることが期待されます。インテージヘルスケアでは、今後も患者やその家族、医師への調査を通して、がんゲノム医療の動向を確認していきます。

分析担当:ヘルスケアリサーチ1部 スペシャリティグループ 加藤 里奈

調査概要

調査目的がんゲノム医療/遺伝子パネル検査の浸透度把握
調査方法郵送調査
調査地域全国
調査対象がん遺伝子パネル検査実施患者
有効回答数106サンプル
調査実施期間2023年10月~2024年1月
調査主体株式会社インテージヘルスケア ヘルスケアリサーチ1部
プレスリリース 調査レポートはこちらから
株式会社インテージヘルスケア

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