2025年OTC医薬品市場は4年ぶりに前年に届かず インバウンド増も「物価高による買い控え」が影響か
OTC医薬品市場トレンド、2025年振り返りと今後の展望
株式会社インテージヘルスケア(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:村井啓太)は、2025年の一般用医薬品(OTC医薬品)の販売動向について調査データ※1を分析し、結果をまとめました。
※1データソース:インテージSRI+
ポイント
- 2025年のOTC医薬品市場全体は4年ぶりに前年に届かず
- 風邪関連薬、検査薬が低調。ドリンク剤も前年割れ。訪日客増で目薬、外用消炎鎮痛剤は好調
- 今後は「エンドベネフィット」※2を重視した製品戦略が市場の再成長の鍵となるか
※2顧客の最終的な価値。顧客が実感できる幸せ
OTC医薬品市場全体は4年ぶりに前年に届かず。薬効別市場規模では総合感冒薬が首位維持も勢い鈍化

2025年のOTC医薬品市場※3は1兆2,780億円で、前年比は金額ベースで135億円減の99%、個数ベースでは97%と、いずれも前年を下回りました。2022年以降、コロナ禍後の訪日客数の増加や国内の人流回復を背景に、金額ベースでは3年連続で増加していたOTC医薬品市場ですが、2025年は前年割れに転じています。
※3指定医薬部外品を含む一般用医薬品の市場を定義とする

次に上位10薬効別の市場規模を見ると、総合感冒薬が最も大きく、2023年にドリンク剤を上回りました。2022年まではドリンク剤がトップの薬効でしたが、2025年は3位となっています。昨今の生活必需品の価格高騰により、必需品ではないドリンク剤などの購買意欲の低下がOTC医薬品市場全体の減少要因になっていると考えられます。

また、上位10薬効で金額・個数ともに前年を下回ったのは、総合感冒薬、ドリンク剤、解熱鎮痛剤、ミニドリンク剤、漢方薬、胃腸薬の6薬効でした。一方、金額・個数ともに前年を上回ったのは、皮膚用薬(除殺菌)、目薬、鼻炎治療剤の3薬効でした。
風邪関連薬、検査薬、ドリンク剤は低調。一方、訪日客増で目薬、外用鎮痛・消炎剤が好調も2026年以降は訪日客の需要も一巡し、追い風は一服の見通し

[不調だった薬効]
最も不調だったのは総合感冒薬で51.3億円のマイナス、同じく風邪関連薬である鎮咳去痰剤も30.7億円のマイナスとなりました。これは、前年に比べ2025年は、体調を崩す人が少なかったことが要因と推測されます。併せて、新型コロナウイルス感染者数も減少したため、新型コロナウイルス抗原検査キットの販売も振るわず、検査薬も低調でした。
次に不調だったのはドリンク剤で33.6億円のマイナスとなっています。外出機会の増加と製品の値上げの影響で、2022~2024年は前年を上回りましたが、2025年は前年割れに転じました。長期的には減少傾向にあり、その要因としては、メインユーザーである団塊世代の高齢化に加え、若年層でのエナジードリンクの定着などが挙げられます。
[好調だった薬効]
2025年も訪日客数は過去最多を更新し、同客層に人気のある目薬は30.6億円のプラス、外用鎮痛・消炎剤も20.3億円のプラスとなりました。一方、2026年以降は訪日客数の伸びの鈍化や「買い物」から「体験」へのシフトが進むことにより、追い風一辺倒とは言えない見通しです。
鼻炎治療剤は花粉の飛散量の影響を受けて市場が大きく変動するものの、長期的には拡大傾向にあり、27.2億円のプラスでした。これは、花粉症の自覚症状をもつ人が増えていることが要因と考えられます。
皮膚用薬(除殺菌)は23.4億円のプラスで、長期的にも伸長しています。高齢化・加齢による肌の悩みの増加、医療用医薬品の有効成分を一般用医薬品に転用したスイッチOTCの拡大、生活者の悩みに特化した製品によるターゲットの細分化などが要因として考えられます。
【考察】「なんとなく良い」から「本当に効く」へ。必需重視の時代に、エンドベネフィット重視で再成長を狙う
コロナ禍以降、人流の回復や訪日客の増加、製品価格の値上げの影響もあり、金額ベースでは伸長を続けてきたOTC医薬品市場ですが、2025年に前年割れへと転じました。人口減少に加え、訪日客の需要への過度な期待も難しくなってきます。賃金が伸び悩むなか、食料品などの生活必需品の高騰が続くことで、「不要不急のもの」や「何となく体に良いもの」への支出はさらに厳しくなると見られます。
一方、健康寿命延伸の動きや、加速する健康志向のさらなる高まりにおいて、OTC医薬品が担う役割は決して小さくありません。働く女性・シニア世代の増加、さらには国家の医療費抑制に向けたOTC類似薬※4に関する制度変更など、OTC医薬品市場にとって追い風となる要素も存在します。
また、昨今のヒット商品を見ると、情緒的価値よりも機能的価値が重視されており、効果・効能を明示できるOTC医薬品には有利な市場環境と言えます。今後はテレビ、SNS、屋外広告などの多様な顧客との情報接点を活用し、生活者にとっての「エンドベネフィット」を重視した分かりやすいコミュニケーション戦略や商品開発の重要性がいっそう高まっていくでしょう。
コンシューマーヘルスケア部 シニアアナリスト 石田 卓也
※4医療用医薬品の中で、OTC医薬品と同様の有効成分を持つ医薬品
調査概要
◆SRI+(全国小売店パネル調査)
| 対象業態 | ドラッグストア、スーパーマーケット、コンビニエンスストア、 ホームセンター・ディスカウントストア |
| エリア | 全国 |
| 調査店舗数 | 約6,000店舗 |
| サンプル抽出 | POSデータのオンライン収集 |
| データ収集方法 | 医薬品、指定医薬部外品(対象カテゴリーのバーコードが付与されている商品のみ) |
| 対象カテゴリー | 2025年4月9日(水)~2025年5月21日(水) |
| 調査項目 | 各店舗におけるバーコード別の販売年月日、販売個数、販売金額など |