インテージヘルスケア、キャンバス AI創薬に関する抗がん剤候補化合物の共同研究で成果
株式会社インテージヘルスケア(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:村井啓太)は、株式会社キャンバス(本社:静岡県沼津市、代表取締役社長:河邊拓己)と進めていたAI創薬による新規免疫系抗がん剤候補化合物の創出に関する共同研究において、成果が確認されたことをお知らせします。
2024年4月より、両社は予備的な共同研究を開始しており、キャンバスが指定したがん免疫関連の薬が作用する標的となるタンパク質であるターゲットに対して、数百万に及ぶ低分子化合物のバーチャルスクリーニングや、ターゲットに結合するペプチドミメティック(※1)の創製を行ってきました。本ターゲットは、比較的結合の弱いタンパク質間相互作用によってその機能が惹き起こされるため、低分子化合物やペプチドでの制御が一般的には困難と考えられています。共同研究では、インテージヘルスケアの持つ、AI創薬プラットフォーム「Deep Quartet (ディープカルテット)」をはじめとするAI創薬技術を活用し、検証を進めてきました。
検証の結果、今後有力なリード化合物(※2)となり得る水準のアフィニティ(※3)を持つヒット化合物(※4)を獲得したため、共同研究契約の目的を拡大し、期間を延長することに合意しました。
今後の共同研究では、インテージヘルスケアではターゲットに対し、高いアフィニティを持つ化合物の探索と創製を続け、複数のヒット化合物の創出を目指します。キャンバスにおいては、得られたヒット化合物のスクリーニングや簡易動物試験などによる評価が行われます。両社の連携による最適化を進め、前臨床試験や臨床試験に向けたリード化合物の創出を目指します。
※1 ペプチドミメティック:複数のアミノ酸がつながって形成される「ペプチド」に似せて人工的に作られた化合物のこと。ペプチドと同じような働きをしつつ、ペプチドよりも安定性が高く分解されにくいなどの特徴を持たせることができる
※2 リード化合物:ヒット化合物をもとに、化学修飾を施すなどの改良や動物実験などによる検証を重ね、結合の強さだけでなく薬としての特性も一定水準以上に良好であると確認できた化合物
※3 アフィニティ:ターゲットへの結合の強さのこと。ターゲットにしっかりと結合する化合物は、低い用量でも望む効果を発揮しやすく、ターゲット以外に結合して副作用を生じるおそれが小さいと期待されるので、ヒット化合物探索やリード化合物最適化の選択基準に多く利用される
※4 ヒット化合物:薬の開発の出発点で、候補となる化合物を絞り込むためのハードルを下げ、広く候補を集める中で候補として残った化合物のこと
「 Deep Quartet(ディープカルテット)」について
株式会社インテージヘルスケアと株式会社理論創薬研究所、株式会社アフィニティサイエンスが 3 社連携で開発・提供するAI 創薬プラットフォーム。「Deep Quartet」は、深層強化学習の技術である(1)Deep reinforcement learning、ファーマコフォアモデルを用いるソフトウェア(2)LigandScout、網羅的なターゲット予測を可能とする機械学習ベースの技術(3)CzeekSを組み合わせた一連のフローであり、ここに(4)メディシナルケミスト(有機合成化学者)の知見を加えることで、Quartet(四重奏)によるAI創薬プラットフォームを実現しています。
技術の詳細や事例については、以下の論文を参照ください。
・Design and synthesis of DDR1 inhibitors with a desired pharmacophore using deep generative models. ChemMedChem 2021;16:955–58.
・Strategies for design of molecular structures with a desired pharmacophore using deep reinforcement learning. Chem Pharm Bull (Tokyo) 2020;68(3):227-33.