季節性アレルギー性鼻炎の処方薬の使用実態
全国1万3000人の患者調査
「季節性アレルギー性鼻炎の処方薬の使用実態」
76%が治療に満足も、薬の選び方によって不満度合いに違いあり
当社は、全国50万人の医療消費者※1を対象に「患者起点(APM)」の調査を実施しました。その中で最近一年間に、「季節性アレルギー性鼻炎」の治療を目的として医療機関を受診し、「経口抗ヒスタミン薬」を処方された1万3894人※2に「処方薬の使用実態」を確認し、結果をまとめました。
花粉症に代表される季節性アレルギー性鼻炎は、くしゃみ、鼻水、鼻づまりなどの自覚症状だけでなく、集中力の欠如や睡眠障害、倦怠感など生活の質(QOL)も低下させることが知られています。今回の大規模調査により、患者の治療に対する満足度などが明らかになりました。
※1 医薬品などを含む医療サービスを享受する患者や一般生活者のこと
※2 最近一年間に経口抗ヒスタミン薬を単剤で使用したと回答した患者
調査結果のポイント
- 季節性アレルギー性鼻炎患者の76%が治療に満足
- 選び方によって、薬の不満度合いや使用状況に違いがある
76%の患者が治療に満足
経口抗ヒスタミン薬を使用したと回答した患者に、治療全般に対する満足度を確認したところ、76%が満足していることが分かりました。
季節性アレルギー性鼻炎は耳鼻科、小児科などの専門診療科が中心となって診療していることが広く知られており、一定水準以上の治療が多くの患者に実施されていることがうかがえます。
次に、使用薬の選び方について確認したところ、自ら希望する薬を選択した、あるいは医師が複数提示した薬剤から自分で選択したと回答した患者の合計は15%。残りの85%は医師が選んだ薬を使用していると認識していることが分かりました。
また、選び方の違いによって、以下の項目に差がみられることが明らかになりました。
①薬の不満度合いの違い
全体の傾向として、おおむね治療および薬に対する不満は少なくなっています。しかし、薬の選び方ごとに見ると、医師が選択した薬を使用している患者の27%は不満を感じていました。意外なことに、医師が複数提示した薬から自分で選んだ、あるいは自ら希望する薬を選んだ患者の方が、それぞれ36%、32%と不満度が高い結果となりました。
②薬の使用状況の違い
薬を医師の指示どおりに使用していると回答した割合は、医師が選択した薬を使用している患者で76%、医師が複数提示した薬から自分で選んだ患者は74%、自ら希望する薬を選んだ患者は71%でした。
考察:すべての人が納得できる選択を導くために
情報があふれている現在において、医療消費者であるわれわれは、自分に合った情報を納得できるかたちで選択できているのでしょうか。
医療サービスの分野においても、SNSなどの媒体から治療に関する情報を入手できる機会は増えています。
一方で、入手した情報が必ずしも自分自身の治療結果としてあてはまるわけではなく、その取り扱いには吟味が必要でしょう。
入手した情報と自身の感じ方にギャップがあった場合、薬剤への不満を高めたり、コンプライアンス※3を悪化させたりするなど、患者が本来望んでいる治療結果を得られないことが懸念されます。
もっとも、薬剤に不満を持つ患者ほど自分から欲しい薬剤を希望し、自己判断で使用していることも考えられますが、その場合にもどこかで同様のギャップが存在している可能性があります。
そのような誤解を避けるべく、医師も患者の希望のみならず、患者自身の情報や治療背景などを共有するために十分に対話を行うことも重要となってきます。そしていわゆるシェアード・ディシジョン・メイキング※4のハブとなることが、製薬企業に求められる新しい役割ではないでしょうか。
つまり製薬企業は患者の声を薬剤の開発や改良に生かし、その情報を医師へ提供する。
医師は提供された情報を基に患者と対話し、最適な医療サービスの提供に努める。
また、製薬企業は患者がその薬剤をどのように感じているか、情報を収集し、薬剤や提供する情報のさらなる品質向上へつなげる。
このように互いにとってポジティブなサイクルが実現できれば、治療を必要とするすべての人が納得できる選択に近づけることができるのではないでしょうか。
※3 医師の指示どおりに服薬すること
※4 患者と医師が情報や目標を共有し、協働して意思決定を行うこと
分析担当: メディカル・ソリューション部 室伏 俊昭
調査概要
調査方法 | Webアンケート調査「患者起点(APM)」 |
調査地域 | 全国 |
調査対象 | 15~89歳の男女 |
有効回答数 | 500,281サンプル |
調査時期 | 2018年8月 ※隔年1回実施(8月) ※2010年より継続調査 |
調査主体 | 株式会社インテージヘルスケア メディカル・ソリューション部 |
調査内容 | 医療消費者・患者の「症状実態」、「治療疾患」、「使用薬剤」に関する調査 |