newsがんゲノム医療に関する医師調査(第2回)

遺伝子パネル検査への懸念点、「患者への説明」が約半数
浸透は道半ば、見えてきた課題とは?
~ 全国の固形がん治療医1300名に「がんゲノム医療」に関する調査を実施 ~

当社は、全国の固形がん治療医を対象に、がんゲノム医療に関する調査を実施しました。これまでも本テーマに関するさまざまな調査を行っておりますが、今回は遺伝子パネル検査(※1)の浸透状況や、医師が抱える課題、さらに今後どのようにがんゲノム医療が患者へ届いていくのかを確認しました。本調査は、2019年6月に遺伝子パネル検査の保険適応取得後に1回目を実施。半年経過した今回が2回目の調査となります。

※1 遺伝子パネル検査:1回の検査で数十~数百の遺伝子を同時に調べることができる遺伝子検査。高速かつ大量に解析可能な次世代シークエンサーが用いられ、見つかった遺伝子変異に対して効果が期待できる治療の有無を検討する

調査結果のポイント

  • 遺伝子パネル検査を「保険診療にて実施したことがある」と回答した医師は3割程度。施設別では、がんゲノム医療中核拠点/拠点病院およびがんゲノム医療連携病院での浸透度が高い傾向
  • がんゲノム医療や遺伝子パネル検査に関する懸念点は、約半数の医師が「患者への説明」と回答
  • 約半数の医師が、がんゲノム医療に関する「基礎知識」や「検査フロー」などのもっとも基本的な情報を求めている




1.施設によって実施状況の差が顕著! 「遺伝子パネル検査の実施状況」

厚生労働省は、ゲノム医療を必要とするがん患者が、全国どこでもがんゲノム医療を受けられる体制を構築するため、全国にがんゲノム医療中核拠点病院を11箇所、がんゲノム医療拠点病院を34箇所指定し、がんゲノム医療連携病院を161箇所公表しています(以下、「がんゲノム医療を担う医療機関」と総称)。これらの医療機関においては、遺伝子パネル検査の実施、検査結果に基づく診断、方針の検討、治療を行っています。
今回、遺伝子パネル検査の実施状況を確認したところ、「実施したことがある」と回答した医師は、がんゲノム医療 中核拠点/拠点病院では60%、がんゲノム医療連携病院では41%と、がんゲノム医療を担う医療機関において浸透が進んでいることが確認できました。

遺伝子パネル検査の流れについて、がんゲノム医療を担う医療機関では半数近い医師が「見聞きしたことがあり、ある程度把握している」とした一方、それ以外の施設では30~40%の医師が「初めて見聞きした」と回答しました。

2.遺伝子パネル検査を実施する医師の懸念点は「患者への説明」が60%ともっとも多い。また、医療施設によって医師が懸念するポイントに違いも

がんゲノム医療や遺伝子パネル検査に関して懸念していることを聞いたところ、がんゲノム医療を担う医療機関では、「治療法が見つからない可能性があることを説明しなくてはならない」が60%、その他施設では「まだ始まったばかりであり、説明に不慣れである/まだ定まっていない」が60%という結果になりました。
検査をしても治療につながらない場合があることや、遺伝性腫瘍が見つかる可能性などを、いかに患者へ説明し、納得を得るかが、医師にとって障壁の一つになっていることがうかがえます。

また、その他施設では、「自身の知識・勉強」や「費用対効果や施設負担」を懸念点にあげる医師がそれぞれ40~50%程度と、がんゲノム医療を担う医療機関と比較して高くなっています。医師が懸念するポイントは、遺伝子パネル検査の浸透状況と同様に、医療施設によって差がある傾向が明らかになりました。



3.医師が求めるゲノム医療に関する情報として、もっとも多かったのは「基礎知識」。基本的な情報の普及が求められている現状が明らかに

遺伝子パネル検査の実施にあたり医師が求める情報は、がんゲノム医療に関する「基礎知識」がもっとも多く50%程度、次いで、「検査フロー概要・注意点」が40%程度となりました。

これは、遺伝子パネル検査の保険適応取得後に実施した第1回調査結果と同じ傾向であり、かつ、施設間のばらつきもみられないことから、情報提供や浸透という点で不十分だと考える医師が多く、依然として基本的な情報が求められていることが示唆されています。

考察

 2019年6月に、遺伝子パネル検査が保険適応を取得して以降、「がんゲノム医療」「オーダーメイド型医療」などについてメディアで報道されることが増え、がん患者さんや一般消費者がそれらを目にする機会が増えています。

 今回の調査結果から、がんゲノム医療を担う医療機関と比較して、その他施設の医師は、がんゲノム医療に関する認知度がまだまだ低く、遺伝子パネル検査を目的としたがんゲノム医療を担う医療機関への患者紹介は、積極的には行われていない可能性が示唆されます。がん医療の均てん化(※2)が全国で進められていく一方で、がんゲノム医療は、遺伝カウンセリングなど専門性の高いスタッフの充実や医師のマンパワー不足などの課題があるため、ある程度の集約化が見込まれています。そのような状況下で、がん患者さんを紹介する側である「その他施設の医師」への情報提供について懸念が残る結果となりました。自身が担当する患者さんへの専門的な説明だけでなく、その後のがんゲノム医療を担う医療機関への紹介の労力なども生じるため、施設を問わず基本的な情報は持ち合わせておく必要があり、その他施設の医師もその点に不安を感じている様子がうかがえました。

 他方、患者さん側の意識はどうでしょうか。インターネットや市民公開講座などから、必要とする情報は容易に得ることができるようになりました。遺伝子パネル検査を希望する患者さんやその家族から、問い合わせを受けたことがあるという医師の話も耳にします。そのような患者さんが訪れる施設が、がんゲノム医療を担う医療機関の詳しい知識を持った医師ならば安心、納得して治療に臨めるかもしれませんが、「自身の知識に懸念がある」「そもそも費用対効果はどうなのか」と考える医師が多い施設では、説明内容や患者さんが得られる納得感に差が生じることが懸念されます。患者さんやその家族も、がんゲノム医療に関する正しい知識や情報を積極的に求めていく必要があるのかもしれません。

 今後さらに、患者さんが納得して遺伝子パネル検査を受けられる施設や医師を選択できるような情報の発信や、それらの情報へ接する機会の充実が期待されます。インテージヘルスケアでは、今後も患者さんへの調査も含め、動向を確認していきます。

※2 均てん化:医療サービスなどの地域格差などをなくし、全国どこでも等しく高度な医療をうけることができるようにすること

分析担当:メディカル・ソリューション部 オンコロジー領域専門グループ 安達 未羽

調査概要

調査目的
がんゲノム医療/遺伝子パネル検査の浸透度把握
調査方法インターネット調査
調査地域全国
調査対象固形がん治療医
有効回答数1,339サンプル
調査実施期間2019年11月(2回目) *1回目は2019年7月に実施
調査主体株式会社インテージヘルスケア メディカル・ソリューション部
プレスリリース
株式会社インテージヘルスケア

SHARE

facebooktwitter

関連サービス