本セミナーでは、創薬研究の新規化合物探索において活用されておりますin silico手法、CGBVS法 (Chemical Genomics-Based Virtual Screening) の新たな技術応用についてご紹介いたします。
京都大学で技術開発されたCGBVS法は、化合物の記述子とタンパク質のアミノ酸配列のデータを機械学習するアプローチで、創薬の新規化合物探索や選択性評価などで利用されています。我々は網羅的な予測計算を高速で行うこの手法の特徴を生かし、2021年5月、8月と2つの応用技術についての論文を発表いたしました。
それぞれの論文内容については以下に記しますが、セミナーでは著者より論文内容のポイントについてご紹介・解説させていただきます。
-
Discovery of Novel eEF2K Inhibitors Using HTS Fingerprint Generated from Predicted Profiling of Compound-Protein Interactions
Atsushi Yoshimori; Enzo Kawasaki; Ryuta Murakami; Chisato Kanai
Medicines 2021, Volume 8, Issue 5, 23
https://doi.org/10.3390/medicines8050023<概要>
CGBVSを応用したChemogenomics-Based Similarity Profiling(CGBSP)法に関する論文になります。CGBSP法とは、化合物-タンパク質相互作用(CPI)の予測プロファイリングから生成されたフィンガープリントを用いた類似構造探索法です。論文ではCGBSP法を用いて非定型プロテインキナーゼのeEF2Kに対し阻害活性を有する新規化合物を得た事例を報告しています。
-
Computational Prediction of Compound–Protein Interactions for Orphan Targets Using CGBVS
Kanai, C.; Kawasaki, E.; Murakami, R.; Morita, Y.; Yoshimori, A.
Molecules 2021, 26(17), 5131
https://doi.org/10.3390/molecules26175131<概要>
CGBVSを用いて、学習可能なリガンドデータが無いようなオーファンターゲット(GPCR)に対するリガンド予測の性能評価を行った論文となります。化合物とタンパク質のそれぞれの記述子(特徴量)について、複数の組み合わせを検討しており、オーファンターゲットのリガンド予測にはMSA(Multiple Sequence Alignment)を利用したタンパク質記述子が有効であることが示されました。また、オーファンターゲットに対するCGBVS法の適用可能性を測るApplicability Index(APX)を定義し、APXがある閾値以上の値になるターゲットに対しては高い予測精度が期待できることを示しました。